扇によせて

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親が残してくれた懐かしいものはたくさんあるけれど
これはまだ中学生だった頃に両親が金沢のお土産に買ってきてくれたもの。
年頃から判断して、親たちは娘の十三参りを意識したのかしら。

飛んでいるのは蝶ばかりでなく、灰色のはもしかしたら蛾・・蚕蛾なのかもしれない。

とてもとても好きな扇だったのに、使い方がよくわからなくて買ったお店の袋に入れて仕舞ったままだった。

扇は日本が発祥だそうだ。
蒸し暑い日本の夏だからこその人々の知恵。

帯にさした小さな扇にはこんな模様が詰まっている・・とひらいた優美な世界を想像するのも楽しい秘め事。

閉じたものを開く・・変化のその瞬間の驚き、喜び。





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# by myway2015 | 2016-02-23 12:42

土と木と水と

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土から木から、種をまき、育ったものから水の恩恵を受けて紙を漉き、糸を紡ぎ、色を染め、果実をもぎ、野菜を育て、器を焼き、生活に必要なものを作る。
たぶん、そこにはもう二度と戻れない世界。
それでもこういうものがあったと伝えてゆくこと。

栃木県益子の藍染工房にて


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# by myway2015 | 2016-02-09 15:56

くるくるくるくる糸紡ぎ

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初めて和綿から糸を作る。
こういう仕組みなのかと驚きました。


はじめは手作業、紙縒り(こより)を作るように指で繊維を捻ってゆくと
ふわふわの綿の中からスルスルと糸が出てくる
20センチほどになったらスピンドルに巻き、糸を撚(よ)る、縒りながら巻く、巻きながら牽く・・・
撚ったら微妙な力加減で糸を牽く、このバランスが悪いと一様な太さが保てない。
どんなに細くても上手く撚った糸は切れない。


糸が紡げれば、洗ったり干したりさらに撚りをしっかりさせてから、縦糸と横糸に分けて布を織る。
織ることは絡めること、ほどけばまた糸に戻る・・・
しっかりしたものができるのは撚ったときや絡めたとき。
撚りを戻すと糸にはならない・・・
ゆるめれば穏やかな綿のやわらかな繊維に戻る。
撚りが戻るということはそういうこと

とにかくも、これは土からできた。
土に育まれて種は芽を出し、花になって綿と云う実をつけ、紡がれて糸となり織られて布となり
布はまた糸によって縫われ人々のまとう衣となる。

紡いでいると内面と対峙できるような気がします。
・・・・・・

シューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン」
8分の6拍子の左手は冷静に絶え間なく廻る。
歌はその機械的な16分音符に鼓動を早められ、耐えきれず叫ぶ。
「・・und ach, sein kuss!」と

忘れようと、忘れずにいようと、忘れようと、忘れずに・・・
繰り返し繰り返しスピンドルが廻るように想いは静まらない。


・・・・・・・・・・

糸紡ぎ体験は楽しい。小さな子供たちにさせてあげたいものです。



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# by myway2015 | 2015-12-24 14:18

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古い帯をかがっていました。
処分してしまおうかとも思ったけれど、軽くてゆるっと結べることに未練があったので。
何度も指をチクリ。
絹糸は指でしごきながら縫わないとすぐにからむし。
不器用で泣けてきそう。

お昼のデザートに少しづつ残っていた
柿と林檎をグラッセにして薄く切ったライムギパンにのせる。
柚子は
(果たしてそんな名称があるかどうか知らないけれど)
ユズネードに。
柑橘系の香りは心を爽やかにしてくれる。
ホントに「ほっとひといき」。


帯をかがりながら考えた事。

「沈黙は金なり・お口にチャック」は大事だと・・。

あのひとことがなければ、あれをぐっと心にこらえていたら・・
と後悔することが何度あっただろう。
失敗は数限りなく・・
無口な女性はひとつのあこがれ。
でも
さらに思考を進めてみたら
口に出しても出さなくても大勢に影響は無かったかもしれないの。
遅かれ早かれ後悔の連続です。

なまあたたかい11月。
春ではないけど中也の詩を思い出します。

                              「春宵感懐」       中原中也

 
                          雨が、あがって、風が吹く。
                          雲が、流れる、月かくす。
                          みなさん、今夜は、春の宵(よい)。
                          なまあったかい、風が吹く。

                          なんだか、深い、溜息(ためいき)が、
                          なんだかはるかな、幻想が、
                          湧(わ)くけど、それは、掴(つか)めない。
                          誰にも、それは、語れない。

                          誰にも、それは、語れない
                          ことだけれども、それこそが、
                          いのちだろうじゃないですか、
                          けれども、それは、示(あ)かせない……

                          かくて、人間、ひとりびとり、
                          こころで感じて、顔見合(かおみあわ)せれば
                          にっこり笑うというほどの
                          ことして、一生、過ぎるんですねえ

                          雨が、あがって、風が吹く。
                          雲が、流れる、月かくす。
                          みなさん、今夜は、春の宵。
                          なまあったかい、風が吹く。





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# by myway2015 | 2015-11-19 14:12

Ma Vie (私の人生)

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友人から毎年いただくカレンダー。おもに詩人くどうなおこさんの詩が月ごとに載っている。
今年も届いた来年用のものには製作から30年経った記念としておみくじハガキが入っていた。
そのおみくじは数種あって、誰にどのおみくじが当たるか包装を開けてのお楽しみなのである。
でもどのひとのおみくじも「大吉」らしい。

わたしに当たったのはこれ。

「わたしはわたしの人生から出ていくことはできない
 ならば ここへ花を植えよう」

あきらめとはちがう、ひとつの潔さ・・幾度も幾度も外の世界をめざし、自分の人生をやりなおし、挑戦し続けた末に
たどりついたゴール・・決意のようだと思う。そしてゴールはまたスタートでもあるのだろう。

お説教めいた文言は好きではないけれど、今この偶然のように舞い込んだおみくじのことばには強く胸を打たれる。

古いシャンソンに「Ma Vie」という歌がある。詩も曲もアラン・ヴァリエール。
あまり日本ではポピュラーではないし、詩も平凡な恋の歌なのだけど、ちょっと思い出した。

「潔さ」と云う意味では佐藤春夫のこの詩も壮絶。
 
 別離
 人と別かるる一瞬の
 思ひつめたる風景は
 松の梢のてっぺんに
 海一寸に青みたり。

消なば消ぬべき一抹の
 海の雲より洩るやらむ、
 焦点とほきわが耳は
 人の鳴咽を空に聞く。

 




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# by myway2015 | 2015-10-26 15:32